売れない不動産の対処法~相続財産管理人選任~
不動産を相続した場合において、自分で使用しない場合は、他人に売るということを考えるかと思いますが、その不動産の価値が低い場合は、売ることができないことも考えられます。その場合、固定資産税がかかるばかりで、負担になってしまいます。そこで、まず所有権を放棄することが考えられますが、これについては、不動産について所有権放棄が一般論として認められるとしても、価値が固定資産税評価額と大差なく、転売可能性の低い土地について所有権放棄が権利の濫用(民法1条3項)に当たるとした裁判例もあり(広島高裁松江支部平成28年12月21日判決(平成28年(ネ)51号))、所有権放棄が認められない可能性があります。
そこで考えられる方法として、相続放棄があります。相続放棄をすると、その相続に関して初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法939条)ため、相続するはずであった不動産についても、所有者とはならないことになります。そして、所有者のない不動産については、国庫に帰属するとされている(民法239条2項)ため、その不動産についても国に帰属することになります。もっとも、相続放棄をしても、相続財産の管理責任は残ります(民法940条1項)。この管理責任は、相続財産の管理を誰かが始めるまでの間に残るものであるため、相続財産を管理する者を見つければよいことになります。そこで、相続財産管理人の選任(民法952条1項)をすることになります。これにより、相続財産たる不動産の管理責任も消滅することになります。
相続放棄と相続財産管理人の選任には、以上のようなメリットがありますが、他方で、相続財産管理人の選任には費用がかかってしまうというデメリットもあります。また、そもそも、相続放棄自体について、相続を知った時から三か月以内に、家庭裁判所に相続放棄をする旨の申述をしなければならないという期間や手続き面においての制限もかけられています。したがって、期間制限に気を付けながらも、相続放棄と相続財産管理人の選任をすべきかを十分に検討すべきということになるでしょう。
司法書士 山田猛司事務所では、東京都調布市を中心に、東京都・関東一円にお住まいの皆様の「遺産承継」「不動産登記」に関するお悩みに真摯に向き合っています。制度の説明や、手続きの代理などを通じて、皆様の疑問や不安が1日でも早くなくなりますようご支援させていただきます。お困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。